感じるな!考えろ! ~理系が本気で釣りにハマったら~

山口県 県東の瀬戸内、山陰にてルアーフィッシング!たまに釣り、魚に関する論文や本を紹介します!

【考察】魚のリリースサイズ問題 大きい魚と小さい魚 どちらをリリースすべき?

お4月1日ですね!

今日から仕事を辞めて、釣りとブログ一本でやっていくことにしたしのぶです。

 

さて、ちょっと依頼があったのでリリースするのはホントに小さい方がいいのか?という問題について、自分なりに考えてみました。

 目次

 

最初に

リリースに関して考えるとき、自然界では稚魚が食べられるのに人間は親魚を食べるから・・・とか、小さい魚の方が体力少ないから、大きい魚をリリースする方が生存率高い・・・とかを聞くことがあります。

どちらがいいんでしょうね?

 

リリースルールについては、色々あるかと思いますが、基本に小さいものをリリースして、大きいのを漁獲するとなっています。

個人的ルールで決めているもの、条例等で決まっているもの、マナー的に言われるもの・・・

私の住んでいる山口県では「キジハタの30cm以下はリリース」と条例で決められています。

今回は「40cm以下のヒラメはリリースすべき」これについて考えていきます。

前回の論文紹介内容もご参照ください 

 

www.shinobulure.com

  

色々考えるための前提

・データは前回のヒラメ論文から年齢分布等を推察

 兵庫県丹波沿岸域におけるヒラメの資源特性

http://www.hyogo-suigi.jp/suisan/seika/kenpo/pdf/kenpo38-2.pdf

・漁も釣りも同様に漁獲であり、同じリリースルールとする

・20cm以下の魚は釣れないし、網にもかからないと仮定

・リリース後の生存率に関して、リリースによる影響は考慮しない。

・20cm以上あれば大きく数を減らすことはないと仮定

 

現状「40cm以下のヒラメをリリース」していて、総生息数は横ばいであると仮定し、「40cm以上のヒラメをリリース」に変更した場合について、増えるのかどうか考えてみることにします! 

 

考察1 ~年齢分布から産卵回数を考える~

①年齢分布と死亡率

まず資料のP.7 Appendix 2より年齢分布を作成します

 

f:id:shinobulure:20190401163112j:plain

1歳魚の漁獲が多く、4歳魚以降はある程度一定となり8歳以降は極端に少なくなるようすが確認されます。

0歳魚が1歳魚より少ないということはあり得ないので、単に小さくて漁獲されていない(網や針に掛からないorリリースされている)と推定されます。

続いて、ここから1歳下の漁獲数との差からと死亡率を推定してみます。(1歳魚は0歳魚の方が非常に少ないため確認不可能)

年齢 生息数 死亡数 死亡率
0 26   0.10
1 176   0.10
2 98 78 0.44
3 42 56 0.57
4 26 16 0.38
5 26 0 0.05
6 30 0 0.05
7 28 2 0.07
8 9 19 0.68
9 7 2 0.22
10 5 2 0.29
11 1 4 0.80
12 2 0 0.80
13 1 1 0.90
14 0 0 1.00


 赤部分はマイナスになる等でデータとして使えなかったため、仮定しました。

 

②各年齢魚の平均余命と産卵回数及び100000匹のヒラメの産卵回数

続いて先ほどの死亡率から、各年齢の平均余命と余命に対する産卵回数、100000匹の0歳魚に期待される出産回数を求めていきます。

【計算方法】

まず余命については、100000匹の各年齢魚が各年齢でどのくらい減るのかについて計算します。

その後、各年齢の総数を足し上げて、100000で割ることで、平均余命が算出されます。(人間の平均余命の計算方法と同様)

今回データ数が多くなってしまうため9歳魚までのみ計算しました。

 

  0歳魚 1歳魚 2歳魚 3歳魚 4歳魚 5歳魚 6歳魚 7歳魚 8歳魚 9歳魚
余命計算 100000                  
90000 100000                
81000 90000 100000              
45102 50114 42857 100000            
19330 21477 26531 61905 100000          
11966 13295 25204 58810 95000 100000        
11368 12631 23944 55869 90250 95000 100000      
10799 11999 22348 52144 84233 88667 93333 100000    
10079 11199 7183 16761 27075 28500 30000 32143 100000  
3240 3600 5587 13036 21058 22167 23333 25000 77778 100000
2520 2800 3991 9312 15042 15833 16667 17857 55556 71429
1800 2000 798 1862 3008 3167 3333 3571 11111 14286
360 400 160 372 602 633 667 714 2222 2857
72 80 16 37 60 63 67 71 222 286
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
平均余命 3.9 3.2 2.6 3.7 4.4 3.5 2.7 1.8 2.5 1.9
産卵回数 1.9 2.2 2.6 3.7 4.4 3.5 2.7 1.8 2.5 1.9

 

続いて0歳魚の各年齢ごとにおける生存数に対して、2歳から毎年産卵すると考え、平均余命に対する産卵回数について荷重平均を取っていきます

{(100000*1.9)+(90000*2.2)・・・(3240*1.9)}/(100000+90000+・・・+72)

=2.5

平均2.5回産卵すると考えられます。

 

③40cm以下のヒラメを漁獲し、40cm以上のヒラメをリリースする場合を考える

これについてはデータがないため、死亡率を次のように仮定します。

年齢 死亡率
0 0.50
1 0.50
2 0.50
3 0.05
4 0.05
5 0.05
6 0.05
7 0.07
8 0.68
9 0.22
10 0.29
11 0.80
12 0.80
13 0.90
14 1.00

この場合、0歳魚~2歳魚が漁獲され、それ以降は漁獲されないことから死亡率は下がると考えられます。

0~2歳魚の死亡率0.5は元データの2~3歳魚死亡率を参考にしました。

こちらについて先ほど同様に荷重平均を出していきます。

  0歳魚 1歳魚 2歳魚 3歳魚 4歳魚 5歳魚 6歳魚 7歳魚 8歳魚 9歳魚
余命計算 100000                  
50000 100000                
25000 50000 100000              
12500 25000 50000 100000            
11875 23750 47500 95000 100000          
11281 22563 45125 90250 95000 100000        
10717 21434 42869 85738 90250 95000 100000      
10181 20363 40725 81451 85738 90250 95000 100000    
9503 19005 38010 76021 80022 84233 88667 93333 100000  
3054 6109 12218 24435 25721 27075 28500 30000 32143 100000
2376 4751 9503 19005 20005 21058 22167 23333 25000 77778
1697 3394 6788 13575 14290 15042 15833 16667 17857 55556
339 679 1358 2715 2858 3008 3167 3333 3571 11111
68 136 272 543 572 602 633 667 714 2222
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
平均余命 2.5 3.0 3.9 5.9 5.1 4.4 3.5 2.7 1.8 2.5
産卵回数 0.5 2.0 3.9 5.9 5.1 4.4 3.5 2.7 1.8

2.5

 

荷重平均 = 2.1

少しですが先ほどの計算結果2.5と比べて下がりましたね

小さいうちに漁獲するようになると、産卵可能になる絶対数が減ってしまうため、資源の減少が加速する結果が見えてきそうです。

 

考察2 ~体重から漁獲量を考える~

これは単純に体長と体重から10kgの漁獲を得るのに必要な漁獲数を計算してみます。

年齢 体長 体重 10kg必要数
0 20 0.04 228.26
1 30 0.16 62.31
2 40 0.40 24.80
3 45 0.59 17.01
4 50 0.82 12.14
5 55 1.12 8.95
6 60 1.48 6.77
7 65 1.91 5.24
8 70 2.42 4.13
9 73 2.77 3.61
10 76 3.15 3.18
11 79 3.56 2.81
12 82 4.02 2.49
13 85 4.50 2.22

体長は仮定、体重は論文の計算式に当てはめています。

この結果から、0歳魚で10kg漁獲しようとすると230匹ほど必要になり、漁獲圧力は非常に高くなってしまうと考えられます。

30cmでも62匹と多いため、出来れば40cmまで待つほうがよいですね!

 

結論

まず最初に個人的な結論からいうと、「小さい方をリリースすべき」となります。

出産回数0で食べてしまうと、出生率下がりますしね・・・

絶対40cm以下はリリースとは言いませんが、出来れば40cm以下はリリースした方がいいかな?という感じです。

ただ、県等によっては条例で決まってる場合がありますので、そちらもご確認ください。

 

 今回の計算は非常に多く仮定が入ってますし、実際の年齢分布通りかどうかも不明です。

それと結局期待値計算はしていませんが、生存率を掛けるか、生存数を掛けるかの違いなので、似たような結果になるんじゃないかと思っています。

 

長くなりましたが以上!

ざっと書いたのでまた修正するかもしれません。

 

この内容でまだ気になる方がいましたら、ご自分で計算するなり調べるなりをお願いします(疲れました^o^

 

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