論文紹介 「異なる背景色におけるスズキのルアー色の選択」 シーバス ルアーカラーの話
最近魚の行動等に興味があり、論文を読み始めました。
今後少しずつ面白かった論文について、内容をまとめて紹介していこうと思います。
第1回目の紹介は
「異なる背景色におけるスズキのルアー色の選択」という論文
2001年の日本水産学会誌に掲載された論文で、鹿児島大学水産学部の先生が研究された内容となっています。
余談ですが、日本水産学会の賛助会員にはマルキューさんとヤマリアさんの名前もありました
超ざっくり内容をまとめると、
「壁面に色をつけた水槽の中で、何色のルアーによく喰いついたか」
という実験です
まぁ言ってしまえば「水の色や光量が変わった時、どの色のルアーに一番シーバスは喰いつくのか」というシーバサーならめちゃくちゃ知りたい内容ですね!
それでは、論文の内容について触れていきます
まず前提の話から
・魚には色が分かる種類と分からない種類がいる
⇒分かる種類にはニジマス等がおり、シーバスも色が分かるとされている
・過去の実験から、背景色の影響は「ある」ことが分かっている
実験の条件(魚について)
・鹿児島の川からセイゴ10匹を捕獲(体長16~21cm)
・10日間巨大水槽で飼育(餌は冷凍オキアミ)
・実験前には餌を与えると素早く捕食するようになっていた
・実験前日はエサ抜き(空腹にさせた)
実験の条件(設備等)
・実験は10月25日~11月13日に実施(水温19~22℃)
・上部のみが開いた箱型ビニールシートの囲いを水槽の中に設置(色は白/赤/緑/青)
・光は屋外の自然光(7時半~17時20分の間に実験)
⇒光量は5800~30000 lx
・疑似餌にはビニールテープを棒状に巻いたものを使用(長さ19mm×太さ4mm)
・疑似餌の色は白/赤/緑/青/透明 (透明以外は光を通さない/透明はほぼ光を透過)
⇒ただし、透明はテープ1枚で光を透過と判断(巻いた時にはすべて透過することはないと思います)
実験
・疑似餌は5色を各5個 計25個使用
・1回の実験毎に疑似餌は回収し、30分以上間隔を開けて、次の実験を実施
・背景色1色につき、20回試行(1色につき2日間かかったとのこと)
・疑似餌を咥えた回数をカウント
・口にくわえるのと直前で見切ったのは別でカウント
論文中の結果
簡単に表でまとめるとこんな感じ
①見切ったものも含めた、疑似餌へ反応した数
白とクリアーが強い感じ
②見切られたものを除くと・・・
バイト数で順位を付けるとほぼ変わらない結果。
しかし、一番下の見切り率を見ると、意外とクリアは見切られてる
逆に青、赤はバイトは少ないけど、見切られてない
論文の考察中で重要と思われる点
・基本コントラストで見えやすいものが選択的に捕食される
・シーバスの目において、一番分光感度がいいのは青~緑の領域
・クリアーが良好なのは、魚の目はコントラストに敏感だからと考えられる
・稚魚、稚エビ、アミ等はクリアーに近いので、それを優先的に食べる説もある
・結論としては、シーバス最強カラーというのはないので、水の色とのコントラストで考えましょう。
その他
この件には直接関係ないけど論文に書いてあった重要そうな情報
(別の論文からの引用のため、今後読んでみます)
・集魚灯は「緑~青色」が一番効果があった
・タイは赤色のエサを好んで食べる(色素による味等の変化の可能性もあり)
・マルソーダは色盲とされているが、色の違いによる効果が確認されている
以上!論文まとめでした
出来るだけ分かりやすくなるよう、かなり端折ってます。
全文を見たい方はこちらからpdfで入手できます
以下は、私の感想等
今回の件は養殖等がメインターゲットになるので、そのままルアーに応用というのは難しいかもしれませんね。
1 疑似餌の形 ペレット型
形による効果は入っていない
10日の給餌でパブロフの犬状態になってる?水面に落ちた餌をすぐに食べてたそうですし・・・
魚型で泳がせた時と、上から落ちてくる時では違う結果になりそうな気もします
2 光量について 自然光を使っているので考慮が必要?
約5800~30000 lxって大分違うと思うんですけど、曇りの日とかなかったのかな?とか
日中にバイト増えてるタイミングが曇りだったりしたら面白いですよね
それと朝7時半開始だとその日1回目の試行は朝マズメになるかと思いますが、1回目の試行は他よりバイト数が多めというのは面白い結果
プランクトン関係ないのに水槽でも朝マズメが強い結果っぽいですね(学習効果??)
逆にその日の最後は夕マズメな気がしますが、増えてないですね??
もっと遅くないとだめなんでしょうか
3 ルアーにした場合、フラッシング効果を無視できない(むしろメイン?)
光量にも関係しますが 、実際のルアーだとフラッシング効果があるので、また違うんでしょうね
4 セイゴサイズと大きいシーバスで食性が同じなのか?
これもたぶん違いますよね
セイゴはアミ等も積極的に食べるかもしれませんが、シーバスは小魚メインのイメージ
マッチザベイトを考えるとやっぱり日中は青とかシルバーがいいのかな??とか考えてしまいます
5 「シーバスの目において、一番分光感度がいいのは青~緑の領域」
これは一つ重要なポイントかなと思いました。
つまり、人間の目で同じように見ようと思ったら赤系サングラスをかけた状態が近いんじゃないでしょうか??
⇒「シーバスが見つけやすい色」を選ぶときは、赤~ブラウン系のサングラス掛けて、海の中泳がせて見つけやすいカラーを選ぶといいのかもしれません
実験では出てませんでしたが、最強コントラストカラーとして黒ってどうなのかなーと思うんですけど・・・気になる・・・
以上論文紹介でした。
個人的には非常に面白く読めたのですが、うまくまとめられているかどうか・・・^o^
今後は英語の論文も読んでいく予定!
いつになるかは・・・未定です(笑)
今持っている論文としては
・マズメの効果検証
・偏光を利用した魚のカモフラージュ
といった内容ですね
早く読みたいけど時間がない!!!!
最後に 著者の1人 川村教授の著書が非常に興味深いタイトルでしたので紹介します
これは今度私も読んでみます
2月1日追記
本買いました
とりあえず少し読みました
タイトル詐欺です 釣り入門ではない!
『魚の行動科学』だったら内容通り?(笑)
なんというか釣り本というより、魚雑学の本みたいな感じですね
魚の生態に興味があって、理系的な文字ばかりの本でも読める人にはオススメします!
釣りに応用出来るかは微妙な気もしますが、釣り業界で一般的に言われている事の検証がされてる感じ
まだ初めの方しか読んでないですが、私は面白く読めそうでした(●´ω`●)
魚の行動習性を利用する 釣り入門―科学が明かした「水面下の生態」のすべて (ブルーバックス)
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